3.石油流通の透明化・公正化の取り組み | |||||||||||||||||||||
(1)系列SS向け仕切価格体系 | |||||||||||||||||||||
一般特約店に対しては製造コストをベースに地域の市況を加味し決定している社が多い。また、全国を数百の商圏(ゾーン)に分割、ゾーン内の市況に連動して価格を決定する社もある。 いずれの場合も、事前に特約店に仕切価格を通知する「先決め方式」が殆どであるが、通知後、価格交渉を一切行わない「完全先決」のほか、翌月末の支払日迄の間に価格交渉を継続する形態も依然残っている。 他方、大手特約店、エネルギー商社などの販売業者に対しては、一般特約店と異なる価格体系を適用しているケースが多い。多くは、原油価格(CIF)、業転(リム)価格等を指標としたフォーミュラにより、個別のSS単位ではなくエネルギー商社等全体で一本の価格を設定しているとするケースがほとんどである。月決め・先決のほか、四半期毎などまとめて価格交渉が行われこともある。 なお、最近のように短期間に原油価格や業転価格が大幅に変動する場合、特定の時期の仕切り価格が、他の方式によって決める仕切り価格との乖離が大きくなるケースがあるとしている。 また、元売が採用している「仕切り価格体系」全てを、一般特約店等に対し開示している例は見られなかった。特約店側の要望が有れば価格体系の変更の交渉に応じるとしている元売もある。一般特約店が複数の仕切り価格体系の中から選択出来るようにするなど、透明性の確保が望まれる。 |
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(2)各種インセンティブ | |||||||||||||||||||||
現在多くの元売が採用しているインセンティブとしては、以下のものが挙げられる。 | |||||||||||||||||||||
@市況対応 多くはゾーンの市況を考慮し値引くもの。コストに基づき仕切価格を決めている元売りも、市況要素を考慮し何等かの対策を実施している。市況対応が仕切価格差の最大の要因となっている。 A規模格差 特約店及びSSの販売量に応じ仕切価格を値引くもの。最大で3円/g程度の格差を設けている元売が多い。 サブ店(三者販売店)に対する卸格差はほとんどの元売で採用しているが、1円/g程度が多い。 B新設・改造補助・転籍補助 一部の元売が新設・改造補助を採用しているが、過去に比べて、補助額は相当低下している。転籍補助は現在ほとんどの元売で行われていない。 |
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(3)仕切価格差 | |||||||||||||||||||||
地域的な仕切価格差については、17年4月及び16年4月時点で比較する限り、ほとんどの元売において全国及び同一県内とも昨年度に比べ格差が拡大しており、全国又は同一県内の全元売の平均価格で8−9円の格差が見られた。 仕切り価格差が拡大した要因の一つとしては、多くの元売で、原油価格リンク、市況リンクなど複数のフォーミュラを採用しているが、大幅な値上がり局面では、採用するフォミュラの違いにより仕切り価格の変動幅が大きく異なることが挙げられる。 |
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表6 平均仕切価格差
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なお、販売子会社に対する仕切価格は、ほとんどの元売が一般特約店に対する仕切価格体系と同一の体系を適用しているとしており、販売数量の違いから販売子会社向け仕切価格は一般特約店向け仕切価格より若干安い元売が多いものの、大きな格差はみられなかった。逆に、販売子会社向けは仕切価格ルールを厳格に適用した結果、通告した仕切価格が交渉により受け入れられない一般特約店向け仕切価格より、結果として高くなっているとする元売も何社か見られた。 他方、大手商社向けの平均仕切価格は一般販売店に対する平均仕切価格に比べ低い水準となっている社が多かった。 元売各社は、系列内仕切価格差が生じる理由として、販売数量の相違による物流コストや販売管理費などコスト差等に基づく場合や、一般特約店と広域特約店とで仕切りの方法が違う事から発生する一時的な要因もあるとしているが、大幅な仕切価格の差は、販売店に不信感を招くことにもなりかねないことから、仕切価格の透明性向上に引き続き努めるとともに、販売店に対する十分な説明や仕切り価格体系の選択肢を広げるなど、より一層丁寧な対応が求められる。 |
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(4)系列SS向け以外の販売 | |||||||||||||||||||||
系列SS向け以外の販売には、JAや商社等のプライベート・ブランドSS向けのように継続的・固定的に販売するものと、需給取引と呼ばれるスポット的な販売があるが、全ての社で継続的またはスポット的なものいずれか、あるいは双方の販売を行っていた。元売によっては、スポット的な販売と継続的な販売を合わせると、月間約70万`リットルに達している。 | |||||||||||||||||||||
@販売量 今回調査では、平成16年4月と平成17年4月における販売価格及び販売量に関して、継続的なものとスポット的なものについて、それぞれ調査した。 結果、販売量は併せて月間約70万`gで、継続的なものの販売数量が減少した場合、スポット的な取り引き数量が増加している。 A価格決定方式 継続的なものは、業転市況リンク、原油価格リンクあるいはその組合せなど、一定のフォーミュラを事前に相手と定め、それに基づき決める場合が多かった。スポット的なものは、業転市況等を基に決める事が多かった。 B価格水準 単純に比較は出来ないが、平均販売価格で見ると、系列SS向け平均仕切価格に比べ、継続的なものが全ての社で安く販売されており、その値差は約1〜8円程度と元売によって大きな差があった。 また、スポット的なものについては、元売によっては系列向けSSに比べ高く販売している社も有るほか、系列向け平均仕切価格を下回る場合でも最大3.5円程度と、販売規模などを考慮するとほぼ系列並みの仕切価格という結果になっている。 継続的な非系列向け仕切り価格で、系列向け仕切に比べ大幅に低くなった理由として、相手先と取り決めていた値決めのフォーミュラが、急激な原油価格やスポット価格の変動に対応でき無かったことを挙げている。(例えば、前々月の通関CIF原油価格を採用している場合。) |
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表7 非系列SS向け製品の販売
単位:数量 千`g、価格 円/g (価格は加重平均値) |
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なお、非系列SS向けガソリンの価格は、継続的なもの、スポット的なものとも、最大格差が同一元売で10円/g以上のケースがあった。 | |||||||||||||||||||||
(5)法人カード | |||||||||||||||||||||
発券店値付けの法人カードは多くの元売が取り扱っており、累計で約400万枚に達しており、平成15年の調査に比べ50万枚増加した。 「発券店値付けの法人カード」については、安値で発券された法人カードが堅調な市況を維持している地域で使用された場合、給油店の粗利の減少などにつながること、代行給油手数料が5〜7円/gと低いこと、給油量が店の販売量にカウントされないことなどが指摘されている。 発行している元売殆どは「発券店値付けの法人カード」に関する販売店側の指摘については認識しているが、顧客が他に流れてしまうよりは代行給油手数料(5〜7円)が得られる方が良いのではないか、発券店値付けカードの多くはSS特約店が利用者の利便を考え発行している、などを指摘する元売が多かった。また、代行給油手数料については、殆どの元売で、SS業界で粗利が減少してきた現状では当面変更(増額)する考えは無いとしている。 また、リース会社などSSを持たない業者等が発行するカードについては、値付け価格が、数ヶ月前の「石油情報センター」の公表価格をベースに四半期毎に決められているため、最近のように価格が急激に変化する場合、タイムラグが生じ実態と乖離した状況が発生していることを認めつつ、月ごとに直近のデータで決めるよう改善したケースがある。 |
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(6)コスト構造と原油調達 | |||||||||||||||||||||
原油価格が高騰する一方、元売各社の平成16年(度)の決算で過去最高の利益計上したことから、元売のコスト構造及び原油の調達先について聴取した。 | |||||||||||||||||||||
@コスト構造 石油製品(ガソリン)コスト構造は、原油価格、税金、精製費、輸送費、販売管理費、利益などから構成されている。 各社一律に課せられる税金(原油関税=2.2円/g、揮発油税=53.8円/g)を除き、費用計上の仕方は各社でばらつきがあった。 石油製品は、製品毎に卸価格が大きく異なることから、製品毎のコスト負担が均等とならないほか、調達原油の重軽質等の種類により精製費も異なるとしており、要因分析、各社間の単純な比較等は困難であった。 一方、利益についてはリッター当たり1〜2円程度する社が多かった(日本の石油製品販売量は約2.5億`gであり、仮に1リッター当たり2円の利益が有る場合、計算上石油精製業界全体で5,000億円の営業利益となる。)。 なお、原油価格の高騰により、精製費に占める燃料費が増加し、コスト高の一要因となっている。 a)原油価格 32.6〜 36.7円/g b)輸送費 1.6〜 6.3円/g c)精製費 1.6〜 2.7円/g d)販売管理費+利益 1.6〜 10.7円/g e)卸価格 96.4〜101.9円/g (平成17年度4月時点) A原油調達 元売各社により異なるが、一部の社を除き、原油調達の殆どが中東からであるが、東南アジア、中国、西アフリカなども調達先として一部存在する。 また、調達方法は、ターム(期間契約)が73〜100%で、殆どの社が8割以上としている。調達価格は、ターム契約といえども産油国が月ごとにスポット価格をベースに提示する価格で決められており、スポットでの調達との差は殆ど無いとしている。 |