中級石油知識Q&A100



V 環境問題など


   Q1 石油の環境負荷について

   A1 1960年代の我が国は、高度成長経済の名のもとに大量生産・大量消費・
      大量廃棄が繰り返され、1967年(昭和42年)から1972年(昭和47年)に
      かけて行われた四日市公害訴訟(コンビナート周辺地区における重油を燃やす
      際に工場から排出される硫黄酸化物による大気汚染問題)に代表される様々な
      公害問題が顕在化してきました。
      これに伴い、我が国の石油業界は、大気・水質・騒音に配慮したクリーンな製油所を
      目指すと同時に製品そのものの品質改善も行ってきました。
      60年代後半から重油脱硫装置を稼動させる一方で(現在までに約8,000億円の
      投資)、自動車排ガス規制(1978年(昭和53年))に先駆ける形で70年代中頃には
      無鉛ガソリンの供給を始めました(同約3,000億円)。
      90年代に入ってからは、ディーゼル排ガス規制、ベンゼン環境基準設定の規制に
      伴い、軽油低硫黄化(約2,000億円)、ベンゼン低減化(約1,400億円)等の設備
      投資を行っています。


    










   Q2 新燃料とは

   A2 石炭、天然ガスといった従来の化石燃料をよりクリーンに有効利用するものとして
      「GLT」、「DME」があります。 「GLT」とは、Gas To Liquidsの略で、天然ガスから
      灯油や軽油などの液体燃料を製造する技術のことをいいます。
      その主成分であるメタンを一旦反応性の高い合成ガスに変換し、触媒による化学
      反応などによって液体燃料を得るというものです。
      GLT技術によって製造された灯油や軽油は、硫黄分や芳香族(ベンゼン、ナフタレン
      等)などの公害の原因となる物質を一切含まないことから、自動車燃料などとして使用
      しても、硫黄酸化物(SOx)や粒子状浮遊物質(SPM)の排出はほとんど出ないとされて
      います。
      さらに、硫黄酸化物が含まれないため、窒素酸化物(NOx)などの公害物質を処理する
      触媒の併用も容易になり、ディーゼルエンジン自動車の排気ガス公害もほぼ解消され
      るものと期待されています。
      「DME」も天然ガスや石炭から作られる合成ガスの一種で、クリーン燃料として注目
      されています。
      常温では無色透明の気体で、地球温暖化の原因となるオゾン層の破壊を引き起こさ
      ないことから、DMEをフロンに代わるスプレーなどの噴射剤等に使用しています。
      DMEは硫黄酸化物(SOx)が発生せず、GLTよりも窒素酸化物(NOx)の発生が少な
      いとされており、よりクリーンな燃料といえます。
      また、LPGに性質が似ているため、貯蔵・運搬に際し、既存のLPG設備や技術が転用
      できるというメリットもあります。
      DMEを低コストで製造ができると、LPGの代替燃料をはじめ発電用燃料、ディーゼル
      燃料等、幅広い用途に利用が可能となります。


    










   Q3 燃料電池について

   A3 近年の地球温暖化問題への取り組みや、資源の有効利用の観点から、燃料電池や
      燃料電池自動車の開発が本格化しています。
      燃料電池の原理は、「水の電気分解」の原理の逆を利用し、水素と酸素を化学反応
      させて取り出した電気を動力源としてモーターで走行させる仕組み。
      燃料から水素を取り出す過程でCO2が発生するが、現在のエンジンの6〜8割の
      排出量に低減される。
      また、その際燃焼を伴わないことから窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)も
      ほとんど発生しない非常にクリーンなシステムといえます。
      この他に騒音が少ないというメリットもあります。
      燃料となる酸素は空気中に存在しているが、水素は天然資源としてはほとんど存在
      してないことから、水素を多く含むガソリンやメタノール等から取り出すことがコスト面
      からも効果的と言われています。
      エネ庁の「燃料電池実用化戦略研究会」では、既存のSSを活用できることから
      ガソリン改質方式の実用化が有望との報告を取りまとめています。
      また、実用化時期目標については、2003年(平成15年)〜2004年(平成16年)とし、
      普及時期目標を2010年(平成22年)以降としています(2010年時点での期待される
      導入目標は約5万台)。
      各自動車メーカーもこの計画に沿って、2003年(平成15年)から2005年(平成17年)
      の期間に製品化する計画を発表しています。


    










   Q4 低硫黄軽油とは

   A4 ディーゼル車等の燃料である軽油から排出される窒素酸化物(NOx)や、すす・粉塵
      等の粒子状物質(PM)による大気汚染の深刻化に対応するため、石油業界では、
      92年から硫黄分を0.2%(2,000ppm)以下に、さらに97年から0.05%
      (500ppm)以下に低減しました。
      さらには、2000年(平成12年)11月には、環境省・中央環境審議会において、
      規制の見直しを行い、2004年(平成16年)末までに0.005%(50ppm)以下と
      することが決められたため、これに合せ、石油連盟では2003年(平成15年)10月
      から0.005%(50ppm)以下の軽油の部分供給を行うこととしていましたが、
      東京都の要請に応える形でさらに半年早め2003年(平成15年)4月から首都圏で
      供給する考えを示しました。


    










   Q5 環境税について

   A5 地球温暖化対策の措置として、環境税(炭素税)の導入について各方面で検討が
      進んでいます。政府税制調査会では、税制全体の抜本見直し作業の中で、環境税の
      導入についても検討テーマの一つとして取り上げています。
      環境省においても、中央環境審議会で導入の具体策の検討を行っています。
      また、東京都税制調査会が2001年(平成13年)12月に示したモデル案では、すべて
      の化石燃料に課税し、炭素1d当たり3,000円(ガソリン1g当たり約2円)の税率と
      した場合の税収額を約9,000億円と見込んでいます。


    










   Q6 諸外国の環境税について

   A6 環境税(炭素税)については、フィンランドが1990年(平成2年)に、世界に先駆け
      導入。
      その後、2〜3年の間に北欧のスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オランダに
      おいても炭素税を導入。(オランダは一般燃料税・燃料規制税) 1999年(平成11年)
      にはイタリア、ドイツが環境目的に既存の税金を増税するなどの事例も出ています。
      各国のガソリン1g当たりへの課税額は、フィンランド(4.3円)、スウェーデン
      (14.8円)、ノルウェー(12.7円)、デンマーク(ガソリンには課税されない。軽油は
      3.2円)、オランダ(1.3円)、イタリア(61.6円)、ドイツ(65.0円)。
      (出所:環境省「地球温 暖化のための税の論点」2001年8月)


    










   Q7 エコ・ステーションについて

   A7 低公害自動車であるクリーンエネルギー自動車(電気・CNG(圧縮天然ガス)・
      メタノール)及びディーゼル代替LPガス自動車への燃料供給を事業として行う
      燃料等供給施設を「エコ・ステーション」と呼びます。
      (2002年(平成14年)3月末現在で全国で207ヶ所)
      1993年(平成5年)、資源エネルギー庁の指導のもと、低公害自動車の普及促進に
      より、地球環境の改善及びエネルギー資源の適正な利用増進に資することを目的に
      財団法人エコ・ステーション推進協会が設立されました。
      当初、エコ・ステーション事業は、既設のSSやLPガススタンドに併設することをベース
      にスタートした。
      併設のメリットは、既設のスタンドの敷地や人員を共用できる、経済性、利便性が
      あるが、現在は、事業促進のため設置条件が緩和され、単独型燃料等供給施設も
      エコ・ステーション事業に取り入れられています。
      エコ・ステーション推進協会では、2001年(平成13年)6月の総合エネルギー調査会
      (総合部会/需給部会)の報告「今後のエネルギー政策について」の中で掲げた
      クリーンエネルギー自動車の普及目標(2010年(平成22年)に348万台)を受け、
      それを支えるインフラ整備としてエコ・ステーションの設置を推進しています。


    










   Q8 SSの土壌汚染対策について

   A8 近年、有害物質による土壌汚染事例の判明件数の増加が著しく、土壌汚染による
      健康影響の懸念や対策の確立への社会的要請が強まっています。
      国民の安全と安心の確保を図るため、土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による
      人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施することを内容とする
      「土壌汚染対策法」が、2002年(平成14年)5月22日に成立し、29日公布され
      ました。
      SSは、この法律の適用外ではあるが、今後の環境問題に関する意識の高まりや
      法規制の強化を想定し、全石連では、環境安全対策研究会(座長:山口梅太郎
      東京大学名誉教授)を設置し、今後の取り組み等について検討しました。
      今年度は、石油協会においてSSの調査を行うなどして、より詳細な実態把握に
      努めています。


    










   Q9 PM問題について

   A9 自動車排出ガスによる大気汚染の中でも、特に健康への影響が懸念される
      ディーゼル車からの排出ガス(粒子状物質(PM))の改善を促進する目的で、
      東京都、埼玉県、千葉県がPMの排出基準を定め、走行規制を条例化しました。
      これにより2003年(平成15年)10月から、PM排出基準を満たさない
      ディーゼル車はPM減少装置の装着が必要なこととなります。
      PM減少装置としては「DPF」(Diesel Particulate Filter)、「酸化触媒」等を指定して
      います。
      石油業界の自主的対応としては、2003年(平成15年)4月から、首都圏において
      低硫黄軽油(50ppm)の供給が始まるなど、PM減少装置を本格的に普及させる
      条件は整備されつつあるといえます。


    










   Q10 グリーン税制とは

   A10 我が国の二酸化炭素(CO2)の19%、窒素酸化物(NOx)の41%が車から
       排出されている現状を踏まえ、2001年(平成13年)4月から、環境への配慮の
       度合いによって自動車税・自動車取得税が減額される「グリーン税制」が
       スタートした。
       環境にやさしい車には低く、反対に環境負荷の大きな車には高く課税するもので、
       これにより低燃費車・低公害車の普及促進を図ろうとするものです。
       グリーン税制の課税については、排出ガスレベルに応じて
          ☆☆☆(三ツ星=基準排出ガス75%低減)
          ☆☆(二ツ星=50%低減)
          ☆(一ツ星=25%低減)
       に分かれており、例えば、最も顕著な事例だと、1500ccのハイブリッド車であれば、
       三ツ星で69,000円の自動車税が35,000円に、109,000円の自動車取得税
       が61,000円になり、計82,000円軽減されることとなります。
       逆に新車登録から13年(ディーゼル車は11年)を経過した車は、自動車税が1
       0%重課税されます。


    










   Q11 トップランナー方式とは

   A11 1999年(平成11年)4月に施行された改正「エネルギーの使用の合理化に
       関する法律」(省エネ法)では、テレビ、エアコン、自動車等の特定機器として
       指定されている機器のエネルギー消費効率を大幅に改善させるため、現在
       商品化されている製品のうちエネルギー消費効率が最も優れている機器の性能
       以上にする「トップランナー方式」の考え方を導入し、機器ごとの省エネルギー
       基準が作られている。
       特定機器の一つとされる自動車の対象範囲は、ガソリン・ディーゼル乗用自動車
       及び車両総重量(貨物積載状態)が2.5t以下のガソリン・ディーゼル貨物自動車
       となっており、そのエネルギー消費効率は、10・15モード法により運行する場合に
       おける燃料1g当たりの走行距離(`b)と定められている。
       また、それぞれの機器のエネルギー効率に関して達成目標年度・基準値が設定
       されており、目標年度において、目標基準値を達成しているかどうかは、製造
       事業者ごとに、それぞれの特定機器について設けられた区分ごとに、製品の出荷
       台数で加重平均したエネルギー消費効率の値により行う。
       自動車の場合の達成目標は、2010年度(平成22年度)までに1995年度
       (平成7年度)対比で20%超の燃費向上を目指すこととしている。
       この加重平均クリア方式は、目標値以上のエネルギー消費効率の製品をより多く
       生み出すことにより、一方で真に市場が必要としている製品であれば目標値を
       下回るものであっても市場に投入できる余地が生まれることになり、製品の多様性
       を確保しながら製造事業者等に対して省エネ性能の高い製品を市場へ投入する
       インセンティブを与えられるといわれている。
       なお、自動車、家電・OA機器については、購入者が機器の省エネ性能を確認できる
       よう、各機器に対し、エネルギー消費効率の表示が義務付けられている。


    










   Q12 地球温暖化問題への対応について

   A12 地球温暖化の原因とされるCO2の排出量は、国別では米国が最も多く(24%)、
       中国(13%)、ロシア(6%)、日本(5%)と続いています。
       この地球温暖化問題に対する国際的な関心の高まりを背景に、1992年(平成4年)
       「気候変動枠組み条約」が採択され、94年(平成6年)発効されました。
       その後、我が国が議長となり「気候変動枠組み条約、第3回締約国会議(COP3)」が
       開催され、CO2をはじめとする6種類の温室効果ガスの国別削減量とそのための
       施策を盛り込んだ「京都議定書」が採択されました。
       議定書では、先進国全体として90年(平成2年)を基準に2008年(平成20年)から
       2012年(平成24年)の平均で5%の削減目標が掲げられ、EU8%、米国7%、
       日本6%の削減が決定しました。
       その後、米国は同議定書からの離脱を表明したが、2001年(平成13年)11月に
       開催されたCOP7で温室効果ガス削減目標達成のため活用しうる京都メカニズム
       (排出権取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)の具体的内容を含む同議定書の
       実施に係る運用ルールが採択されました。
       我が国では、2002年6月、同議定書の批准を決定しました。
       ロシアを除く欧州連合(EU)や途上国の多くなど70カ国あまりが批准を終えて
       います。
       各国が批准を終え議定書が発効すれば、離脱した米国を除く先進国は温暖化
       ガスの排出削減義務を負うことになり、世界規模の温暖化対策が本格化する
       こととなります。
       また、同時に我が国では、地球温暖化対策推進法の改正案が成立し、段階的に
       温暖化ガス排出抑制策を導入することとなります。


    










   Q13 排出権取引について

   A13 「排出権取引」とは、汚染物質の許容範囲を予め排出者に割り当てておき、
       その割当量以下の排出量の場合は、その余剰分を他者(例えば排出量を
       上回った排出者)に売買できる制度。
       この制度は、買い手としては排出権をいかに安く調達するか、売り手としては
       いかに高く売ることができるかというマーケットメカニズムによって市場価格が
       決まる仕組みであり、より少ないコストで環境負荷物資の削減を実現する
       経済的手法として注目されています。
       アメリカでは、複数の仲介業者を介して民間ベースで60件以上の取引が
       行われています。
       我が国では、コスモ石油が、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の
       排出権購入に関するオプション契約を豪州の植林会社と結んでいます。
       契約量は280万dで、植林会社が2012年(平成24年)まで植林する
       ユーカリのCO2吸収量を「排出権」として取引します。
       この取引は、企業同士の取引では世界最大規模となります。
       コスモのCO2年間排出量は約400万dで、契約量はその約7割に相当します。
       CO2の排出権は現在1d当たり千円程度で売買されており、排出権を利用する
       ことで企業が温暖化政策にかかる負担が大幅に削減できます。
       排出権取引は97年(平成9年)の地球温暖化防止京都会議で、CO2削減の
       実現方法の一つとして導入が決定しました。


    










   Q14 北海道版“炭素税”とは

   A14 北海道独自の地方税の一つとして、道は2002年(平成14年)3月「炭素税」
       (仮称)導入の具体案を示しました。
       道の構想によると、二酸化炭素の発生源である化石燃料を課税対象とした
       環境目的税で正式名称を「北海道地球温暖化対策税」としています。課税対象は、
       灯油、重油、石炭、石油ガス(自動車用燃料を除く)、天然ガスとされ、既に
       高率の税が掛けられているガソリン、軽油は対象外となります。
       課税方式の原則は、広く、薄くであり、家庭用で炭素1d当たり200円、
       産業用で80円と想定しており、家庭用灯油では1kl当たり137円となります。
       1世帯の年間負担額は455円程度との試算。
       徴収方法は、灯油・重油については、石油販売業者を特別徴収義務者と指定し、
       道に申告納入する方式。
       導入時期については、明確にしておらず、この案をもとに関係方面との協議に
       入りたいとしています。
       北海道石商では、徴税に伴う販売業者の事務負担がさらに増すこと、消費者への
       価格転嫁が困難になること等から、導入について絶対反対の立場を採っています。


    










   Q15 PRTRとは

   A15 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とは、有害な物質を取り扱う
       工場や事業所等から、環境中へ放出される有害化学物質の排出量、廃棄物に
       含まれて事業所外へ移動する量等を事業者自らが把握して国に報告する
       制度をいいます。
       我が国でも、1999年(平成11年)「特定化学物質の環境への排出量の把握等
       及び管理の改善の促進に関する法律」(略称:化学物質排出把握管理促進法、
       通称「PRTR法」)が制定されました。
       これに伴い、石油業界でも、製油所や油槽所とともにSSを運営する一定規模
       以上(=従業員が21名以上いること、指定化学物質を取り扱っていること)の
       事業者も対象事業者となり、該当物質の排出・移動量をSSごとに算出し、
       SSの所在する都道府県を経由して所管大臣(経済産業大臣)に対し、2002年
       (平成14年)4月から6月までの間に2001年度(平成13年度)分を届け出ることが
       義務付けられました。
       全石連では、PRTR制度の概要、またパソコン上にガソリン等の数字を入力する
       だけで必要な排出量等を導き出せる算出表、届出様式等をホームページ上
       (コチラをクリックして下さい。)に掲載しています。